名古屋大学 ACS 論文撤回 その3

研究不正

こんにちは。はーどこあです。

名古屋大学の撤回論文を分析するシリーズです。名古屋大学の伊丹教授らの論文「リビング縮環π拡張重合によるグラフェンナノリボン合成」は、2019年6月に科学誌『Nature』に掲載されましたが、使用したデータに疑義があることのことで、2020年11月25日付で当該論文は取り下げられています。アメリカ化学会のJournal of the American Chemical Societyに掲載された関連論文が2021年2月21日付けで取り下げとなりましたので、本誌内容を分析いたします。

前回はSupporting InfromationのNMRを分析いたしました。今回はMALDI-TOF Massスペクトルについて分析いたします。実はこのMSスペクトルかなり妙です。何が変かというと、スペクトルが棒グラフなんです、Massを測定した方ならご存じですがGauss分布でスペクトルは描かれます、棒グラフでかいても不正を疑われるだけです。例えばn=14とかn=15体のgauss分布を持つスペクトル出すだけでよくないですか? しかしながら撤回となったnatureの論文といいそんなスペクトルは出てきません。

引用: Figure 1(a) in J. Am. Chem. Soc. 2020, 142, 4, 1686–1691

もしかしてもしかしてデータ量を削減するために、棒グラフで書いたのかもしれません。しかしながら、棒グラフとしてもスペクトルを記載する際、n=xx体に対応するピークは同位体(2H, 13C)の存在により棒一本はそれぞれ特有の半値幅を持ちます。この分子量だとおそらくexact massに対応するピークは見えません。一方その同位体が強度が高いピークとして見えるはずです。乱暴な言い方をすれば、その同位体ピークの見える幅が棒グラフの幅となるはずです。その一方で、ノイズのピークとGNRのスペクトルの半値幅が同じです。こんなことあり得ません

残念ながら結論はご想像通りでしょう。

5 件のコメント

  • このマススペクトルは横軸の表示範囲がかなり広いので、ソフトウェアの表示上ピークの横幅が最小の1ドットになってしまい、結果として棒グラフのように見えるのは自然なことです。ピークの半値幅は拡大しないと見えないので言及しようがありません。
    また、ポリマーのマススペクトルでは質量分布(重合度分布)も重要な情報なので、この図のようにポリマー特有の一定の質量差をもったピーク群を示すのが一般的であり、「例えばn=14とかn=15体の単一のピークを載せる」というのはそぐわないでしょう。

    • saiさん
      まず、精密質量を見たいのであればぎりぎりまで拡大すべきです。残念ながらJACSには拡大画像がありませんでした。ちなみにNatureの拡大画像は棒グラフです。Gauss分布のスペクトルはでてきません。
      >ポリマーのマススペクトルでは質量分布(重合度分布)も重要な情報
      おっしゃる通りです。ただそれならば、精密質量を測定する必要はないんです。

  • 拡大しないとわかりませんが…、、
    重要なのは棒グラフの幅ではなくて分解能な気がします。
    ピークに幅があっても分解能によっては幅の端と端は全く別物由来の信号にみえるかもしれません。
    そういう意味では棒グラフのほうが明確にm/zに対応する強度を示すことができます。棒の幅よりは棒同士の間隔が重要に思えます。
    データ量を削減するために棒グラフにしたのかも、というよりは別の意図を感じます。
    (あまりゆっくり見ていないので認識不足はありそう。)

  • 若干コメントさせていただきます。

    ●はーどこあ様のご所見について:
    当該論文で使用しているMALDI-MS機器(JEOL製JMS-S3000)は少々特殊な質量分離機構を採用しており、一般的な機器よりも質量分解能が高いという特徴があります。このマススペクトルの質量範囲では1Da差の質量ピークを充分に分離検出可能です。棒グラフのように見えているのはピークがシャープすぎるためで、この点は特に変なことではなく作為は感じません。ご確認ください。

    ●他の疑義:
    ①Supporting Informationの同じページに図(b)としてn=14の拡大図が掲載されていますが、n=14の元素組成であれば10本程度の同位体ピーク群が観測され、左端のmonoisotopicイオンから6Da高質量側のピークが最大強度になるはずです。しかしこのマススペクトル(b)では3-4本しか出ておらず、しかもmonoisotopicピークが最大強度になっていることも不自然です。察するに図(b)はGNRの低重合物(n=2程度)の測定結果あるいはその同位体分布シミュレーションを貼り付けて作成したのでは。

    ②また表(c)にはn=11~23に対する計算質量が記されていますが、リピーティングユニットを間違っています。算入するべきではない両末端のH原子4個までリピーティングユニットに含めて計算してしまったものと思われます。これに付随して、図(A)の図中に「Δm/z=538」と記されているのも正しくは534です。

    • poipoi様
      コメントありがとうございます。Spiral TOFですね。
      >このマススペクトルの質量範囲では1Da差の質量ピークを充分に分離検出可能です。棒グラフのように見えているのはピークがシャープすぎるためで、この点は特に変なことではなく作為は感じません。ご確認ください。
      棒グラフになること自体は問題ありません。質量ピークとノイズのピークの棒グラフの幅が同じなことに懸念を覚えています。仰る通りn=14体であれば、10本程度の同位体ピーク群が見えてそれが棒グラフの幅になるでしょう。なぜ全分子量体において、ノイズのピーク幅と質量ピークの幅が一緒なんでしょうか。

      >monoisotopicピークが最大強度になっていることも不自然
      仰る通りですね。残念ながら著者、レフェリー双方に質量分析の知識があまりにも欠けていたと言わざるを得ませんね。

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