名古屋大学 Nature論文撤回 その4

研究不正

こんにちは。はーどこあです。
結論は見えてきている感もありますが、名古屋大学の撤回論文を分析するシリーズの第4弾です。

繰り返しになりますが、名古屋大学の伊丹教授らの論文「リビング縮環π拡張重合によるグラフェンナノリボン合成」は、2019年6月に科学誌『Nature』に掲載されましたが、使用したデータに疑義があることのことで、2020年11月25日付で当該論文は取り下げられています。

前回はGNR8のマススペクトルを分析し、全体図と拡大図におけるノイズの強度が一致していないことを明らかにしました。今回は反応生成物のGPCスペクトルを分析します。

さて誌内では、フェナントレンIとベンゾナフトシロールMをカップリングさせてグラフェンナノリボン GNR2を合成しており、フェナントレンIに対するベンゾナフトシロールMの量比を10等量から500等量に変えた場合のいずれにおいても72~86%の高い収率となっています。

下のGPCスペクトルは、Nature 2019, 571, 387のFigure 1cで、上記反応のクルード(精製前)サンプルを分析したものです。リビング重合後のクルードサンプルのスペクトルを見たことがないのですが、とても綺麗ですね。もう少し肩が出てもよさそうですが。

Figure 1c in Nature 2019, 571, 387

著者らは本重合反応のリビング性をデモンストレートするために、ベンゾナフトシロールMを開始時10等量、3h後90等量と分割添加しており、反応開始1h, 3h, 12h後の反応粗製物のGPCスペクトルが下記になります。1h, 3h後のピークは、上図の1/M=1:10のピークと同様18.5minあたりに出現し、12h後のピークは上図の1/M=1:100のピークと同様15.3minあたりに出現しており、ベンゾナフトシロールMを分割添加した場合も問題なく重合できたように見えます。注目していただきたいのは、下図の20-24minの飽和したピークです。反応開始後3hまで存在した22minのピークは消失し、反応開始後12hにおいては20minにシフトしています。一方、上図の1/M=1:100(緑線)において、20min近傍のピークは見受けられません。目的とするグラフェンナノリボンは上手く重合できているにもかかわらず、違うピークが見えてくるのは解せません。

Extended Figure 1d in Nature 2019, 571, 387

なお、GPCでは分子量が大きいほど早く観測されること、強度が極めて強いことから、20-24minあたりのピークはo-chrolanilなどの原料由来のピークと思われます。

まだ続きます。