名古屋大学 ACS 論文撤回 その1

研究不正

こんにちは。はーどこあです。
名古屋大学の撤回論文を分析するシリーズです。名古屋大学の伊丹教授らの論文「リビング縮環π拡張重合によるグラフェンナノリボン合成」は、2019年6月に科学誌『Nature』に掲載されましたが、使用したデータに疑義があることのことで、2020年11月25日付で当該論文は取り下げられています。アメリカ化学会のJournal of the American Chemical Societyに掲載された関連論文が2021年2月21日付けで取り下げとなりましたので、今回は本誌内容を分析いたします。

まず、撤回文は下記のとおりです。
“The authors retract this Communication following the discovery that the original procedure of the synthesis of monomer 1a is not reproducible. In addition, the exact molecular weights of 2a (Figure 1 and Figure S15) were calculated wrongly based on the assumption that all carbon atoms in graphene nanoribbon (GNR) 2a were 12C (monoisotopic), which affected the matrix-assisted laser desorption/ionization time-of-flight (MALDI-TOF-MS) data of the GNR 2a. These issues undermine our confidence in the integrity of the study as a whole, and we therefore retract this Communication.”

日本語に訳すとAPEX反応の原料となるケイ素架橋したフェナントレン1の合成が再現できないこと。GNRs2aの精密質量は、GNRsの炭素原子がすべて12C由来の炭素であるとの間違った前提のもとに計算した、となります。後段については、natureと同じ撤回理由を述べています。再度説明いたしますが、精密質量は天然存在比が最も大きい同位体の組み合わせで計算しますので、すべて12C由来の炭素で計算しても何ら問題ない訳です。なのでこちらは撤回の理由になりません。今回もexact molecular weightsという用語を使っていますが、そんな用語はありません。exact massと記載すべきです。

APEX反応の出発原料1

続きます。