名古屋大学 ACS 論文撤回 その2

研究不正

こんにちは。はーどこあです。
名古屋大学の撤回論文を分析するシリーズです。名古屋大学の伊丹教授らの論文「リビング縮環π拡張重合によるグラフェンナノリボン合成」は、2019年6月に科学誌『Nature』に掲載されましたが、使用したデータに疑義があることのことで、2020年11月25日付で当該論文は取り下げられています。アメリカ化学会のJournal of the American Chemical Societyに掲載された関連論文が2021年2月21日付けで取り下げとなりましたので、本誌内容を分析いたします。

前回は撤回文を分析いたしました。今回は合成の再現性が取れないというシリコン架橋したフェナントレン1aについて分析いたします。

APEX反応の出発原料1

下図は、当該論文のSupporting Informationの37頁に記載された出発原料1aのNMRスペクトルです。Supporting Informationとは論文の補足情報で、どなたでも無料で入手することができます。どうも3ppm当たりのベースラインピークが凹んでいるように見えます。

引用元:J. Am. Chem. Soc. 2020, 142, 4, 1686–1691 Supporting Information

3-4ppmを拡大するとこんな感じです。ここだけベースラインピークの幅が太くなっていますね。何か変です。

Acrobatを使ってPDFを編集してみたところ、太くなっている領域に白いオブジェクトが張り付けられており、ピークが隠されていることが発覚しました。白いオブジェクトを貼ってピークを消したのち、ベースラインを追加したんでしょう。はい。データ改ざんです。

3.5ppmの隠されたピーク

なお、出発原料1aだけではなく、1b, 1c, 1dのNMRスペクトルもデータ改ざんされていました。